山根口腔インプラント研究所からの伝言 No.11
山根歯科医院 院長 山根 進
下顎奥歯にインプラントをする場合に口腔内観察をして、術者が一番注意することは、骨が十分あるか、また骨高が十分あるかのチェックであります。
まず、骨幅について述べたいと思います。当院が使用しているストローマン社のインプラントの直径は3.3から4.8mmであります。インプラント周囲の骨は頬側、舌側とも1mm以上必要であります。従って、骨幅は少なくとも5.3mm以上であります。5.3mm以下の場合、骨幅を広げる処置を行います。
骨高は歯槽骨頂から下顎管までの距離があります。神経、血管は下顎管の中を通っており、小臼歯部位にあるオトガイ孔から口腔粘膜へ出てきて、同側の口唇、オトガイ部位に分布しています。したがって、この神経を傷つけてしまうと、口唇が麻痺してしまいます。ピリピリした感じやつねに蟻が這っている感じがする錯感覚になることもあります。この麻痺は3ヶ月後でなおる場合もあれば、3年かかる場合もあります。不幸にして、なおらない場合も有ります。したがって、この下歯槽神経を傷つけないことが至上命令であり、インプラントの先端を下歯槽管から2mm以上離すことを心がけて手術をおこなっています。ストローマンインプラントの一番短いインプラントは6mmでありますから、歯槽骨頂から最低8mm必要になります。そこで、骨高をあげる処置が必要になりますが、困難な場合があります。そこで固定式のインプラント義歯から、可徹式のオーバーデンチャーにする場合もあります。下顎奥歯にインプラントする場合、常に下歯槽神経を損傷しないことを心がけなければなりません。断層のCT撮影をおこない、骨幅、骨高だけでなく、必ず下歯槽神経の部位を確認しています。